親子(オヤコ)

昔、昔坂嶺のある所に父、母、娘の三人が家族仲良く暮らしていました。

その娘さんは両親の願い通り美しく心優しい女性に成長したそうです。
そして、村でも評判のいいその娘さんには嫁にもらいたいという人が次々と現れました。 両親も結婚を勧めてはみるのですが娘はなかなか聞き入れてくれません。

そこで、訳を聞いてみると、 真夜中に美しい男性が来て
『私の住んでいる国はとても広く、又広い海があり大きな船が人や荷物をたくさん積んで通ります。そして、いろいろな考えを持った人達が楽しく生活しています。』
というような話をするのだそうです。
娘は今まで聞いたことも無いような話を聞かせてくれるこの男性を好きになってしまったということでした。
そして、その男性は毎晩真夜中にきて、いろいろ話を聞かせるとのこと。

両親はその話を聞いて、両親に挨拶もせず、真夜中に娘と話に来るとはおかしな事だ。 化け物ではないか?もしかすると”あれ”では?といろいろ考えました。 でも、娘には
『お父さん、お母さんはお前の好きな男の顔も分からなければ、家も分からない。 その男が本当に良い人かどうかどうしても一目見ておきたいのだ。そこでどうだろう、今度その男が来たとき、 気付かれないよう男の着物に長い糸を通した針を刺しておいてくれないか。 そうすれば糸を辿って男の家が分かるから。』
と娘に言いました。

そしていつも通り男は真夜中に来て話しをして帰っていきました。

翌朝・・・。糸は男性が帰っていった方向に続いています。
父がその糸を辿りながら歩いて行くと50m程離れた小高い丘の穴に続いていました。
『やはりそうか!』
とお父さん、すぐにお母さんに話すと
『大変、昨日お父さんが話しした”あれ”だわ!』
しばらく、二人は相談をして娘を穴の反対側に連れて行きました。
そして娘に 『小高い丘の上に立って、次の事を唱えながら飛び降りなさい』と教えました。
娘が教えられたとおり
『悪者はすぐに外に出よ!』
と言いながら飛び降りると・・・ まあなんと、その娘さんのお腹から蛇のこどもが出るわ、出るわ

これを見ていたお父さん、『もう大丈夫!!』と言い驚いているお母さんと娘さんを家に連れ帰り ご先祖様に娘の無事を報告しお経をあげ家の周囲にしめ縄を張りました。

その晩から男は娘さんの所に現れることは無くなったそうです。

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